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医師と患者のすれ違いを解消するためにできること【1】

薬剤師のお仕事

「医師と患者のすれ違いを解消するためにできること」
ここ数年、考える機会が多いテーマです。解決してはいませんけど、いったんまとめてみました、これはまだまだこれから考えてゆくテーマです。続きます。
だって、医師と患者がすれ違ったら、損をするのは患者さんなんだ!

薬局で患者さんとお話ししていると、患者と医師とのすれ違いを感じることが時々あります。

(よくある例その1)
高血圧症の治療中に、患者本人が血圧はもう十分下がっていると自己判断して薬をやめていたが、医師はそのことを知らず診察時に「血圧いいですね」と言う。患者はますます「飲んでいません」と言えなくなり、飲まない薬がたまってゆく。

(よくある例その2)
スタチン服用中にとある雑誌を読んで不安になり、医師に相談したが「大丈夫だから飲みなさい」と言われた。でもお友達からも「その薬やめたほうがいいんじゃない」と言われて結局飲んでいないので、まだ薬がたくさんある。(という話を、他科の処方せん受付時に聴取する薬剤師…えぇ…)

それを解決するために、まずは薬剤師のことばでお話して、急ぐケースならその場で疑義照会、急がないケースでは次回診察までにトレーシングレポート提出、あるいはお薬手帳に書き込みなど、適した手段を選びます。

医師にお伝えして改めて患者さんに話をふってもらったり、患者さんをうながして次回の診察でもういちどお話してみるようすすめたりしますが、解決しないまま患者さんが離れてしまうこともある。(患者さんが怒ってるケースとかは、とくにね…。)

医療現場の行動経済学―すれ違う医者と患者
大竹 文雄/平井 啓【編著】

医療現場の行動経済学―すれ違う医者と患者
「ここまでやって来たのだから続けたい」「まだ大丈夫だからこのままでいい」「『がんが消えた』という広告があった」といった診察室での会話例から、行動経済学的に患者とその家族、医療者の意思決定を分析。医者と患者双方がよりよい意思決定をするうえで役...

そういうことでもやもやしたりしてたんですけど、すれ違うもんなんだよね、って受け入れたのはこれを読んでからでした。

医師は森を俯瞰しているが、患者は目の前の道や障害物しか見ていないので、かみあわない。
一方的に正しい情報を提供しても、患者がそれを受け入れて正しい行動をするかどうかはわからない。
おなじ情報でも提供のしかたによって私たちの意思決定は違ってくる。
そういうもんだ。

とある研修会で、平井先生に質問できる機会がありました。

Q.
薬局薬剤師として働いていると窓口での会話で、患者と医師のすれ違いに気づくことがある、気づいたら、医師に報告したり、患者を促したりもするが、もっと有効な方法がありましたら、教えてください。

A.
患者に、考えてること、知っておいてもらいたいこと、嫌なこと、などを書き出してみることを勧めてください。
ひとりで書けないようなら手伝ってあげてください。

すれ違う前にすり合わせてゆくこと。
軽くACPのようなことだなぁと思いました。
患者さんが「じぶん」を表出するお手伝いをすることで、医療者も患者さんの価値観を知れてもっと適切なアドバイスができるようになるし、患者さん自身も自分を見つめなおすきっかけになるし、いいですよねコレ。
患者さんはもっと自分のことを伝えていい。

実際は時間も限られているので、ひとりの患者さんと深く話したりカタチにする機会というのはなかなか作りにくいのが問題点ではあります。お薬をお渡しする時の会話の中で、少しずつ本人の価値観をカタチにしておくこと、更新してゆくことがだいじかも。薬歴も、これを振り返れるような形で残したいところです。

(このときの研修会は、心不全の終末期の意思決定がテーマでした。病気を受け入れられない人もいる、やはり意思決定は難しく、正しい情報を与えられても正しい選択をできるとは限らず、じゃあどうする?って、手探りで明確な答えのないことを話し合ったのですが、とても勉強になりました。いつも面白いので医療職はぜひ⇒九州心不全緩和ケア深論プロジェクト

終末期のACPほど大ごとな話ではないにしても、
高血圧の治療に対してじつはどう考えているとか、じつは何も考えていなかったとか、じつは血圧よりも腰痛のほうが大事なんだとか、それより便秘をなんとかしてくれよとか、そういうことが患者さんにはとっても大事だと思いますけど、そういう価値観を医療職も大事にしてゆくと、よい医療ができるのかなぁと思います。

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