PCAポンプはどこがいいかなぁとか思ってたくさん調べたのですが、がん末期で使用するならやっぱり CADD-Legacy® PCA Model 6300がよさそうだなぁと思っていました。県薬が1台持ってるのはテルモ社で、10mLシリンジでも心不全緩和とかならこの量でもいけそうだし、これとおなじのを買って交換しながらうまく使えたらいいなとも思った。ある病院では日本語の製品が職員の理解がすすむからという理由でJMSで話をすすめていた様子。でもいろいろ見るうちに、良さそうなだけで機種を選べない事情があることもわかってきた…。
本体価格と年間保守費を、耐用年数で採算がとれるまでにもっていくには、1台あたりの使用回数をかなりこなさないとならない。T社の保守はよさそうだったけど、修理や定期メンテのあいだの代替機が保障されないので、薬局で買うなら2台もちでないとまわせない(コスト2倍、しかも1台は代替機として置いておくため基本使えない、1台で2倍の回数をこなさないと)。さらにそのつど人件費と消耗品費(カセットやシリンジなど)が発生するわけで、これを関係各所でどう折り合いをつけてゆくか。
医科が業者に直接借りると、ポンプ加算では採算があわないレンタル価格になるため直接借りることはほとんどない。カセット代は患者さんが負担している地域もある様子。薬局がポンプを購入し医科に利益がでるようポンプ加算より安く貸しているケースも多いが、余裕を持てる大手チェーン店にしかできないことだろう。この場合、「お安くポンプレンタルできますよ」というのはよい宣伝効果でもある。
さて、地域の中小薬局ではこの手は使えない。
かかわるすべての人々に損が発生するため全く話が進まない中で、やはり、どうやってポンプの貸出しを効率よくするかがカギになる。
×複数人同時に退院することもあるから、といってポンプをむやみに増やす
ひとつの薬局ががんばりすぎて買いすぎるともちろん採算があわない…1台につき年X回のノルマは人件費も増やす。職員のテンション下がる。ブラックまっしぐら。
×地域の薬局が1薬局1台持つ
かといって個々の薬局が「しゃーない、赤字でもポンプを買って、ウチへの依頼だけでもなんとかするか」って始めると(当店がやればこのタイプ…)、おそらく1台であっても採算があわず、その情報を得た近隣薬局にますますポンプを利用した緩和医療にマイナスイメージが強まります。そしてウチが倒れたらポンプ事業ごとそこでおしまい。
×ポンプ持ってないから、と言って在宅医療の依頼を断る
断る、という選択肢はまぁ論外なんですけど、いまはこのケースも多い様子。そもそも「ポンプ貸出できますか」前提で話を振られると、持っていなければ断らざるを得ないかと思う。ここはとても大切だと思うんだけど、「ポンプないけど在宅医療はやるよ!」って言える環境があればいい。断らせない在宅医療…。ポンプを持つことがステータスになっちゃうと、大手とのはりあいになって確実に負ける。
×ポンプは一部の薬局しか扱わない、ほとんどの薬局に関係ない仕事である
前述に同じことなんだけど、いちばん残念なのは、これがポンプ事業にお金を払いたくない薬剤師会の考え方だということ。ポンプを薬剤師会で取り扱わない理由は、ポンプ関係ない会員薬局が多いから、なのだと。県薬がかろうじて1台持っているのもおそらく、学生実習で使われているだけで、実際に患者さんの役に立っているわけではない。まぁそれを貸出してくれるだけでも良しとするか…(当店は無菌調剤室も県薬の会営薬局に借りています)。そもそも「関係ない」わけがないんだけど、それについては後述。
◎ポンプを持ってる持ってないにかかわらず、患者さんちの近くのかかりつけ薬局に在宅医療を任せられる
いちばんの理想は、地域で一括してポンプの管理をしてもらい、ポンプの貸出しに左右されずにそれぞれのかかりつけ薬局が患者さんの自宅療養をフォローできることだ。そもそも薬局はポンプの点数に左右されずに仕事をする立場なので、「ポンプを持ってないからその在宅できません」というのはおかしな話ではある。業者など(※)にポンプを借りて、麻薬の調剤は自薬局で行うことができるはず。
(※)このポンプ貸出の基幹薬局を薬剤師会にやってもらいたかったが、支部も県も良い返事もらえず。
◎ポンプを持つ薬局を地域で1か所にすると、すべてのポンプ貸出がその薬局にあつまり、採算がとれる可能性が増える
そもそも1か所にあつまれば、数の把握が容易になる。私は、この地域では年間何件のPCAポンプ使用退院事例があるのか、いろいろ訊ね調べてみたが結局のところはっきりしなかったのですが、これも把握できて、けっきょく地域でポンプを何台持てばよいかがわかってくると思う。
もうひとつ大事なのは、1台につき年間X件、2台持ちでその2倍を1台でこなす、3台もちで3倍を2台でこなす、4台持ちで4倍を3台でこなす…と増えていくと、そのすべての処方せんをうける人件費が大変になってくる。だから、かかりつけ薬局が処方に対応できるなら任せて、基幹薬局はポンプだけ貸す、というケースが増えたほうがいい。これを薬剤師会がするなら、基幹薬局は貸出だけしか関与しないきまりにしてもいいくらいだと考えていた(※)。
(※)上におなじ