いろいろ考えたので書き残しておきます
調剤薬局はなぜクラスターが発生しないのか?
SNSで、給付される慰労金が調剤薬局は対象外であることにはじまり、話が紛糾していた。
もともとの記事は「医療・介護従事者に慰労金 対人業務のみ対象」(日本経済新聞)とあり、この記事だけ見ると調剤薬局が対人業務をしていないから対象外と言われているように見える。
これの元である厚生労働委員会のネット中継ではそういう言い方はされておらず、薬局の仕事は理解したうえで薬局が対象外なのは
「薬局そのものはクラスターが発生していない、発生するおそれが相対的に低いのではないか」
と感じているから、らしい。とってもアバウトだけど事実そうだから、とのこと。そのかわり感染拡大防止対策などに要する費用について補助をするから今後もがんばれ、ということだ。
(ちなみに薬局の職員に感染者は出ているしそれが原因で休業していた薬局もあったようですが、薬局からその他大勢の患者に広げてない、という意味でしょう)
調剤薬局は、有症者がとつぜん来局するという意味ではリスクはある。
しかし、マスクやアクリル板など職員を守る飛沫感染対策をおこない、長時間しゃべったり滞在することのないように薬局側が気を配っているし、換気もおこない密になる状況を避ける工夫ができている。また、薬局内の消毒は根拠に基づいて十分に行っているはずだから、「有症者に接する職員」が感染することを避けられれば、患者同士でうつしあったり職員が患者にうつしたりという危険性は「相対的に低いのではないか」という考えにはなんとなく同意する。
低いというか、リスクを下げることができていると考えたい。これって検証できないのかな…。なんといっても薬事衛生をつかさどる薬剤師の仕事であるから、ここは自信を持ちたいところ。
これに関して日本薬剤師会は薬局における感染対策の指針を示さなかったので(根に持っている)(広島県薬剤師会は示してくれた)、
個々の薬局で感染対策に力を注いだ、頑張ったということではないかと思う。
まだ終わりではないのでこれからもがんばります。
対物業務と対人業務の線をどこで引くのか
結局上記の記事は厚生労働省委員会の内容を日経が「対人業務」ということばで表現しただけのようなので、これは日経が悪いんですけど、
べつに国は薬局が対人業務をしてないとは言っていない。
そもそも対人業務へ報酬を切り替えてゆくことは国が主導しているんだから。
以前もこんなことがあって、その時も薬剤師のあいだですら意見が割れていたと思う。
「対物から対人へ」という言葉が両者の優劣をつけあおってしまった経緯があるけれども、そもそも対物対人の言葉の定義があいまいで、話す人によっておそらく意味が違っているので、いつもかみ合ってない気持ち悪さを感じてきた。
物を渡す前と、後の違い?
物を扱う仕事と、人と話す仕事の違い?
物を見ること、人を見ることの違い?
私は、薬歴をよく活用して患者の全体像を知り、処方鑑査や疑義照会、調剤、最終鑑査をできる薬剤師は、たとえ患者に会っていなくても、モノだけを見る仕事と切り捨てられないと思っている。
しかし、
いまの雰囲気では患者と接点ないので対人業務と言えなくなる。
(規模の大きい薬局は、こういう働き方をする薬剤師がいます)
薬を飲んでからが勝負、といつもおっしゃるH先生は、患者をみて薬学的に判断して処方医に伝えよとおっしゃる。
そのために個々の患者にあわせて患者背景を把握しバイタルサインを含めた情報をあつめ活用するのが対人業務であるということ。
いつも服薬後のフォローを強調されるのでかんちがいされやすいけど、重要なのは「薬学的な視点」だということだ。
私としては
対人業務は、患者さんが個々に合わせた薬物治療が受けられるよう薬学的な視点からサポートすること。
対物業務は、対人業務を支えるための業務のすべて。
と考えたい。対立するでもどちらが大事でもなく、両者なければ成り立たない業務だということだ。