【保険薬局における疑義照会により処方箋に記載された全ての処方が削除となった事例に関する調査検討】日本薬剤師会雑誌2020年72巻11号より
薬剤師による疑義照会で、処方せんに記載されているすべての薬剤が削除になった場合、処方せんそのものが無くなってしまいます。医療費削減に貢献しているはずなのに、無報酬で記録に残らず注目されない…といった事例の調査記録。
こういう調査、待ってました!チェーン薬局に勤めていた頃なら自分でやりたいくらいだった。
845薬局中158薬局の回答で回答率18.7%とのこと。こんなもん?少なくない?みんな協力しようよ!めっちゃ興味あるよね!?
とはいえ、過去1年間の全処方削除例を記憶から探し出すのは難しい。職員だって入れ替わりあるだろうし。その日の薬歴が発生しないから疑義照会の記録も書けなくて、個人的には、コメント欄にちょっと記録を残しておく…という感じで対応していましたが、新患さんだと歴すらないですから、記録に残さない薬局も多いのではないでしょうか。(今回これを読んで、記録の残し方考えないといけないなと思いました、広島で調査されたら答えられるようにしておきたいですね)
全処方削除理由は、「重複していた」と「残薬があった」が多く、「禁忌疾患に該当していた」も10%ほどあるようですね。これらは薬剤師グッジョブ。「患者の希望の薬剤でなかった」ことが薬局にきて初めてわかる、というのは、全処方削除よりも大事な問題が隠れていますよね。「患者の受け取り拒否」は、抗生剤が欲しかった例が挙げられてますが、支払いにからむ内容も多いのではないだろうか。
表3に、ザイボックス錠あるの泣けますね…いったいどんなストーリーがあったのか。削減金額の大半をこれが占めるのでは。
個人的に全処方削除例で困るなぁと思うことは次のようなこと。
・がんばってそろえた薬が不要になること
・患者さんと話したり医療機関に問い合わせたり、そこそこ人件費がかかっているのに、すべて白紙になること
・記録に残らないのでもしこの件で問い合わせを受けたらあいまいにしか答えられない
・不要になった処方せん、どうしてます?即処分できます?(ちょっと気持ちがね)
・みんなのこころにモヤモヤが残ること
あとは、私がなんとなく覚えている、重複による全処方削除例をいくつか記録しておこう。
内科からムコスタとロキソニン、整形からセルベックスとセレコックス、みたいなやつですね。これはめちゃくちゃよくありますし、気づかずに調剤されてるケースも見受けられます。整形がまるごと削除されるか、内科が処方を控えるかで、決着します。
内科からユナシン、歯科で抜歯後にケフレックスとか。先行する抗生剤の服用期間にもよりますが、たいてい後続は削除になる。
内科でフォサマック、整形でフォルテオとか。ホネは大事ですけどね…フォルテオ使用期間終了後に、必要であればフォサマック再開するのが無難ですが、患者さんの意向によっては「注射は嫌なんよ」ということも。
おなじ病院からの薬で重複していることもありますので、「先生!◎◎さんはもう××を服用されているので…△に変更しますか?」「あぁーそうだっけ、じゃあ中止で!」みたいなことも。処方をわかりやすくするためにも、ポリファーマシー解消は大切です。
私は、患者さんが受け取り拒否した全処方削除例はあんまり経験ないですが、
片頭痛にトリプタン系が処方されて、本人は薬局で支払いにびっくり、いつものセデスでいいわって拒否されたりするのは、昔はよくありましたよね。お試しということで1錠まで処方を減らして、それで金額に納得してもらえるようなら、受け取ってもらえます。効果に納得してもらえれば、今後は必要量をご自分で申し出てくださるようになります。
本調査の削除理由にはあがっていませんでしたが、
クリニックから「◎◎さん入院中だったらしいから処方せん削除しといて!」という電話が追っかけかかってきて削除になったりします。
お渡し済みだと本当に面倒なことになります。
どうか皆さま、入院中なのを内緒にして、他の病院を受診しないでくださいね。